夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

「最後まで俺に縦を突いたお前が。
俺を憎んで……嫌って……。
それでも俺が忘れられなかっただろ?」


三井先生の怪しい声が、怪しい笑顔が。
私の胸を切り裂いていく。


「心も体も……。
お前は全部……俺に支配されてるんだよ」


ブルブルと小刻みに震える体が、恐怖で乱れる呼吸が、三井先生の言葉を裏付ける様だった。
結局私は過去を乗り越えてなんかいなかった。
今でも三井先生を見ると思い出してしまう。
あの時の事を、鮮明に。
漸く光を浴びた私の心が、また暗闇に、真っ黒な世界に染まろうとしていた。


「なぁ……もう意地を張るなよ。
俺に身を任せれば何も辛くねぇよ」


そう言って三井先生は私の髪を上から下まで撫でおろす。


「あっ……」


嫌だ、嫌だ、嫌だ。

頭の中がそれでいっぱいになる。
心が悲鳴を上げているのが分かる。
でも上手く声が出せない。
恐怖で目の前が真っ暗になって何も考えられなくなる。


「いい子だ。
じっとしてれば悪いようにはしねぇよ」


不敵な笑い声が聞こえる。
ああ、また中学の時と同じ事になるんだ。
全てを諦めた様に私は体の力を抜く。

その時、いきなり誰かに引っ張られた。


「……大丈夫ですか?……高瀬さん」

「せ……先生……?」


抱きしめられる体が、耳元で囁かれる声が。
三井先生のものではなく先生のものに変わる。
たったそれだけの事なのに私は安心した様に先生に抱き着いた。


「テメェは……あぁ、高瀬の学校の水泳部の」

「はい。顧問の蒼井と申します。
……あなたは?」

「三井だ、コイツの中学の時のコーチ」

「……三井って……」


先生は私に目を向ける。
その顔は驚きに染まっていた。
先生は気付いたんだ。
三井先生が私の恐怖の対象だと。


「……いい加減にしてください」

「……は?」


先生は私を抱きしめながら三井先生を見る。
見るというより睨んでいるって言った方が正しいかも。
先生がこんなに怖い顔をしてるのを初めて見るかもしれない。


「彼女を……どれだけ傷つければ気がすむのですか?」

「……テメェには関係ねぇだ……」

「関係あります。
あなたのせいで高瀬さんが大好きな水泳を諦めかけたんです。
黙ってなんかいられません」


先生の低い声が私の気持ちを代弁してくれる様だった。