わあ、周りを見ても男子しかいない。
予選の時もそうだったけど女子の選手が大会には出ていないのだ。
水泳部が男女混合になって大会も男女混合。
だから基本的には男子しか出ていない。


「女子がいるじゃん!」

「よろしくね~」


何か嫌だな。
女ってだけで好奇の目で見られる。
まるで昔の、思わず過去を思い出してしまう。
頭を横切るのは荒城中学の水泳部の男子たちの顔。


「っ……あっ……」


目の前が真っ暗になる。
ど、どうしよう、もうすぐで試合が始まるというのに。
自分が泳ぐコースに並び準備を始める。

やばい、手が、手が震えてゴーグルをつけようとしても上手く付けられない。
こんな事では駄目なのに。
ギュッと唇を噛みしめる。
それでも体の震えは治まる事はなかった。


「高瀬さん」


不安でいっぱいだった時、優しい声が耳に届いた。
先生?少し遠くにいる先生の方を見れば優しい顔で軽く頷いてくれる。


「先生……」


私も軽く頷く。
不思議だ。
さっきまで不安だったのに一気に消えた。

やっぱり先生って凄いな。
私は少し微笑みゴーグルをつける。
手も体ももう震えてなんかいない。


「よーい……」


いよいよ始まる。
緊張の中、スタートの合図が鳴り響いた。
それと同時にプールへと飛び込む。