つまり、高岡くんの見た目だけで“好き”って言っているの?
人がどんな理由で誰を好きになろうがその人の勝手だけど。


「高岡くんに失礼だよ」


相手が高岡くんなら話しは変わって来るよ。
いや、誰が相手でもこんな事を聞いて黙っていられる訳がない。


「あーもう!ウゼェ……」


女の子は私の胸ぐらを掴んだまま何処かへと引っ張っていく。
私が行こうとしていた方向に。
待って、そっちには階段しかないんだけど。
他の女の子たちに目を向けても怪しい笑みを浮かべるだけ。


「離して!」


身の危険を感じ腕を動かす。
でもあっという間に3人に取り押さえられてしまう。
気が付いたらすぐ後ろは階段だった。

あーちょっとヤバい感じ?
嫌な汗が背中を伝う。
でも負けて堪るか!そう思いながら3人を睨み続ける。


「はーい最後のチャンス」

「高岡くんと別れてくれるよね?」


私の答え次第でこの後どうなるかなんて一目瞭然。
だけどここで引く訳にはいかない。
高岡くんは私の大切な親友だから。


「まぁ付き合ってないけどさ……。
アンタ達に高岡くんを好きでいる資格はない。
それだけはハッキリと言えるよ」


ニコリと笑顔を浮かべた瞬間、私の視界はグラリと揺れた。
ゆっくりと女の子たちが視界から消えていく。


「サヨナラ」


怪しい顔で私に言い放つ3人。
何も出来ない自分が悔しい。
せめて1発でも殴っとけばよかったかな。

あぁ駄目だ。
そしたら大会どころじゃなくなる。

宙に投げ出された私の体。
そんな状況でも考えるのは水泳の事だった。