「ねぇ……いい加減にさ……高岡くんと別れろよ」

「……」


まだ勘違いをしている。
だから別れろと言われても。


「付き合ってないのにどうやって別れるんですか?」

「嘘ついてんじゃねぇよ!」


ハァ、嘘なんかついていないのに。
タメ息をつきながら私は女の子たちを見る。


「嘘じゃないし言いがかりもいい加減にして下さい。
私は忙しいんです!」

「はっ!高岡くんの追っかけで水泳部に入ったくせに!」


相手にしないで立ち去ろうとした。
でもその言葉がどうしても許せなかった。


「追っかけ?馬鹿な事を言わないで。
私はね水泳が好きであそこにいるの。
これ以上、私の水泳への想いを馬鹿にすると私だって黙ってないから」


水泳への想いだけは馬鹿にされたくない。
女の子たちを睨むように見る。


「な……何よ!」

「泳ぐ事の何が楽しいの?」

「熱くなっちゃって馬鹿みてぇ!」


は?何を言っているのこの人たちは。
自分が何を言っているか分かっているの?


「それはさ……。
私だけじゃなくて高岡くんの事も侮辱してるって分かってる……?」

「そんな事……」


女の子たちはハッとした様に口を閉ざす。


「アンタには関係ないでしょ!?」

「まぁ……関係ないけどさ」


私は高岡くんの彼女じゃないし口出しできる立場でもない。
でも。


「好きな人の好きな事を侮辱する様な人に高岡くんの事を好きでいて欲しくない」


高岡くんは私の親友だから。
親友をそんな目で見られたくない。


「なっ!?」

「高岡くんの何を見て好きだって言ってるの?
彼の事が本気で好きなら水泳の事を悪く言えるはずない」


高岡くんは本気で水泳が好き。
そんなのは見ていてすぐに分かる。
自分の好きな人が真剣に打ち込んでいる物なら応援するのが筋ってものじゃないの?


「ハァ……馬鹿ねアンタ」

「え?」

「アタシたちはさ……高岡くんの顔が好きなの」

「そうそう!一緒にいるだけで鼻が高いって言うか~」


次々と言われる言葉に目を見開かずにはいられなかった。