1週間後


「真希ちゃん……スゲェ……!!」

「ま、また負けた!?」

「ふふっ!私は負けませんよ!」


部活中のプールでは皆大騒ぎだった。
それは自由形の先輩たちと私の声だった。
再び泳げる様になった私は、今日もまた水泳人生をエンジョイしていた。
大会に向けて先輩たちと泳ぎこみの毎日。
練習量は半端なく多いけど、楽しくて、辛いなんて全く思わなかった。


「高瀬!
スゲェなお前!完全復活じゃねーか!」


先輩たちと騒いでいれば、平泳ぎのプールから高岡くんがやって来た。
その顔は満面な笑みを浮かべており、私もつられて笑ってしまう。


「ありがとう!
もう、誰にも負ける気はしない!」


大きく出た私を馬鹿にする事なく、私と一緒に笑う高岡くんは自由形専用のプールへと飛び込んできた。


「わぁ!?」

「ったく!ちょっと泳げる様になったからって調子乗ってるんじゃねぇぞ!?」

「ちょっと!髪が乱れる!!」


ぐちゃぐちゃと頭を撫でられる。
そんな光景を先輩たちは笑いながら見ていた。
私も、高岡くんも、皆も。
部活中が笑顔で凄く和やかな雰囲気だった。
またこんな光景が見られるなんて。
その中に私がいるなんて、少し前の私からは想像もつかなかった。
嬉しいけど、不思議な感じだ。


「高瀬さん……本当に良かった……」


何処からか小さな声が聞こえてきた。
振り向けばプールサイドには哀しそうな先生が立っていた。


「先生……?」

「え?えーっと……。
練習量を増やしましょうか。
100メートルを……取敢えず100本」

「は、はい!!」


泳げる事の嬉しさから、私はどんな練習量でもこなせる自信があった。