「さて……これで役者は揃いましたね」


先生の優しい声に皆はニコリと笑う。


「え……?」

「大会メンバーの自由形の最後の選手は高瀬さんに決定です」


最後の選手って。
訳が分からず首を傾げる。


「実はもう大会メンバーの発表は皆にはしてあるんです」

「え?」


何で!?私はそんな事を聞いてない。
驚きを隠せずに目を見開く。


「お前が変に緊張するとダメだからって先生が気を遣ってくれたんだよ」

「ちょっと待って意味が分からない」


高岡くんが教えてくれるけどさっぱり分からなかった。


「高瀬は最初からメンバー候補で、泳げたら問答無用で選手決定だったんだよ」

「なにそれ……泳げるかも分からないのに……」


そんな私を候補に入れてくれてたって。
先生を見れば嬉しそうに笑う先生が目に入る。


「僕は高瀬さんの事を信じてましたから。
皆さんも賛成してくれてます」

「あんな綺麗な泳ぎ見せつけられたら代わりなんて出来ねぇよ!」


そう言って笑顔を浮かべるのは自由形の先輩だった。


「先輩……」

「頑張れよ!」

「……はい!」


先輩とハイタッチを交わし笑顔を浮かべあう。

皆の優しさが、皆の温かさが、凄く嬉しい。
絶対に優勝しなきゃ。
無理でも何でもやらなきゃ皆に顔向けできない。

固く決意をして、右手を上に振り上げた。


「やってやるんだから!!」


自由形の高瀬 真希。
今一度、水泳界に名前を刻みこんでやる。