俺は一歩づつ少女に近づき、隣に座った。

「お前、名前は?」

「………さ」

「ん?なに…?」

「…心彩(みさ)。」

「心彩…か…」

「…ふっ。」

「なにが、可笑しいの…。」

「あぁいや、なんかお前らしいなと思っただけ。」

ただなんとなく。

「………っ……。」

…え。

「まって…なんで泣いてんの…?」

「っ…ぅ……」

「マジかよ…いや、泣けっつったのは俺だけどさ…今…?」

「…だっ…て……」

「あ…笑ったりして悪かったって…。だからもう泣くな?」

そう言うと心彩は大きく首を横に振った。

「ち…がう…うれし、かった」

「そっか…。」


今までなんの感情も見えなかったその目から、大粒の涙がこぼれていく。


それを俺はただただ見守ることしか出来なかった。