1300年の恋

「え、や…あの……っ」


狼狽える私をよそに、雅紀さんは上機嫌で。


それでも振りほどけない強さで私の手を握っていた。



少し歩くと、目の前に猿沢池が見えてきて。


雅紀さんは躊躇もなく池の畔へと足を進めた。

 

池の水を見ると、私の体はぞくりと強ばって。


「どうしたん?」


それが手を通して雅紀さんにも伝わってしまったようだった。


「…怖いんです」


こんなこと、誰にも言ったことがなかったのに。


私の口からするりと言葉が零れ落ちた。


「この池見てると、吸い込まれそうになる」


雅紀さんはじっと私の顔を見て。


それから猿沢池を振り返った。