「……慧、くん……」
だって、名前を呼ぶだけで、こんなにドキドキして、幸せな気持ちになれる。
ちょっとした時間が、幸せなひとときへと変化していく。
「なに?」
ただ要望に応えて名前を呼んだだけなのに、優しい声で首を傾げられた。
「え……な、なにって……」
「俺が、なに?」
その意地の悪い言い方で、すぐに気づく。
これはまた、あたしに言わせようとしてるな……。
「ず、ずるい。また言わせようとしてるでしょ?
あたしだって、け、慧くんからそういう言葉……聞きたいのに……」
すぐにハッとして、自分の口を押さえた。
まさか自分の口から、こんな子供じみたワガママが出てくるとは思わなかったからだ。
「ふーん、聞きたいんだ。俺の言葉」
けれど、目の前にいる彼はそれが嬉しかったのか、あたしを見つめて微笑みながら呟いた。


