だけどそれも、束の間のこと。



ふいに、有馬くんはあたしから離れると、強引に手を掴んで、グイグイとそのまま美術室の中へと突き進んだ。



……え? えっ?



戸惑っているうちに美術室の中へ連れ込まれたあたしは、ドンッと背中を壁に押し当てられた。


有馬くんが、あたしの前に立ちはだかる。



そのままあたしを閉じ込めるようにして、両手をあたしの顔のそばについた。



少しだけ首筋に汗を浮かべて、荒い呼吸を繰り返している。



走ってきたせいか、目の前の胸板はせわしなく上下していた。



「あんた、さっきのヤツに何されてたの?」


有馬くんが身をかがめて、あたしと目線を合わせた。


怒りを含んだ声に、あたしは思わず身を縮こまらせる。