すると、朝霧くんはそっとあたしの耳元に近づき、とても穏やかな声でつぶやいた。
「俺、1年のときから美月ちゃんこと知ってたよ」
……え?
思わず身体の力が抜け、どういうこと?という疑問が心に浮かぶ。
朝霧くんは、あたしが逃げないということがわかったのか、少しだけ抱きしめる腕の力を緩めた。
そんな中で、語りだす。
「俺、学校行事とか委員会とか割りと参加するタイプなんだけど、困ってる子とか放っておけないんだよね」
「…………」
「でもさ、うまくできなくて困ってるやつがいると、俺より先に助け舟を出してる子がいたんだ。
気づけばいつもその子は他人のことばっか心配してる。もの静かだけど周囲の様子をよく見てて。そうやって、なんとなく気にしてるうちに、その子のことを目で追うようになった」
旧図書室の静かな空間の中で響く朝霧くんの声が、あたしの心に染み込むように入ってくる。
無性にも、泣きたい気持ちになった。
「あれー?なんでかなーって思った時には、もうやられちゃっててさ。この子のこともっと知りたい。知りたいだけじゃなくて、他の奴には取られたくないって思った」
……こんなところに、あたしのことを見てくれてた人がいた。


