大丈夫。


我慢するのは得意だ。


だって、有馬くんは言ってくれたもん。



〝もうちょっとで絵、完成するから。あれ描き終わったら、また一緒に帰ろ〟



あと少しの辛抱だよ。待つことくらい、平気。



今は……あたしがただ、有馬くんの絵を妨げる要因でしかないなら……。



「あたし、有馬くんの邪魔してるよね?」


「?」


「有馬くんは絵を描きたいのに、あたしのせいで描けてない。……ごめんね」


「…………」



すると、有馬くんは突然、スッとあたしから離れた。


ベッドから降りて上靴を履き、そのまま背を向けて保健室のドアの方へ向かってしまう。



「……有馬くん?」



いきなり失った温もりに戸惑い、弱々しい声で名前を呼ぶ。



「あんた、何もわかってないよ」



振り返らないまま有馬くんは、それだけ言って保健室を出て行ってしまった。



すっかり眠ってよくなったあたしの身体。



けれど有馬くんの言葉が、あたしの胸に大きなわだかまりを残していった。