「本当は、近くの公園に写生しに行くつもりだったけど……こんな雨だし、ここで許して。確かになんもないけど……」



有馬くんは申し訳なさそうにつぶやく。


雨に濡れないようにわざわざ配慮してくれたのに、あたしは何を躊躇ってるんだろう。



有馬くんの優しさを踏み躙るなんて、そんなことはしたくない。



「……じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔します」



「どうぞ。俺の部屋はこっち」



そして、有馬くんに促されるまま入った部屋は、画材でいっぱいだった。



……これが、男の子の部屋……。


でもたぶん、絵描きの部屋とも言うよね。



有馬くんらしく、しっかりと整っているキレイな部屋だけど、一部に無造作に置いてある画材やキャンバスが目にとまる。



「あ……」



その中に、以前あたしのために描いてもらったオオカミと月の絵もあった。