「なに?1本じゃだめ?」



「あ、いや……そうじゃなくて、まだ帰らなくていいんだって思って……」



「? 当たり前だろ。まだあんたのこと帰さないよ」



ドキッ。



……当たり前、か。


有馬くんの言葉に嬉しくなって、思わず笑みがこぼれる。



コンビニを出て、傘をさした有馬くんの隣にピッタリとくっついた。


相合傘だ……。



「あ、でも……やっぱ帰ることになるのか」



有馬くんが、ポツリとつぶやく。



「えっ?」



「そうだね。うん、帰ることになる」



有馬くんの言葉の意味を理解するのは、これから数分後、雨に濡れたアスファルトを歩き続けたあとだった。



迷子に、石原くんに、雨に……。



ハプニングだらけのデートだけど、それでも有馬くんと一緒なら、幸せな時間に変わりなかった。