有馬くんが連れてきてくれたのは、とあるカフェだった。


ガラス張りのお店の前に立つだけで、甘い匂いが鼻腔をくすぐる。



もしかして……。



「ケーキ屋さん?」


「正解。よくわかったね。さすが、食べ物に関して鋭い」



隣で有馬くんが、関心したようにつぶやく。


ムッとしたけど、あたしはそれよりもガラスの向こうに見える、可愛らしいさまざまなケーキに目を奪われていた。



「美味しそう〜! 種類もたくさんありそうだね!」


「食べたい?」


「うん!」



大きく頷くと、有馬くんは満足げな表情で笑った。



「よかった。あんた前にケーキ好きって言ってたから」



あ、だからそれで、ここに……?


15時という曖昧な時間の待ち合わせもなんでだろうと思ってたけど、ちょうどおやつの時間を考えてくれてたのかも……。



驚くあたしをよそに、有馬くんはあたしの手を引いて中に入った。



店内は女性のお客さんが多いが、他にもカップルで来てるお客さんもいた。


ワクワクしながら周りを見渡してると、店員さんが中へと案内してくれる。



有馬くんとあたしら席に着くと、額を突き合わせてケーキのメニューを覗き込んだ。