ようやくホッと一息つくことができると思った束の間。


手のひらを重ねられ、そっと強く握られた。



それは、世に言う恋人繋ぎだった。



「……っ!?」



「バカが迷子にならないように、しっかり手を繋いでてあげる」



意地の悪い言い方をする有馬くんに、あたしの胸がギュッと締め付けられる。



……う、嬉しい……。



惚れた弱みというやつだ。



バカって言われようと、イジワルされても、嬉しいという気持ちが上回ってしまう。



でもたぶんそれは、ちゃんと有馬くんの行動に優しさが含まれてるからだよね……。



有馬くんもあたしのことが好きなんだって、伝わってくるから……。



あたしもそっと手を握り返して、有馬くんの隣に寄り添った。



数分遅れのデートは、甘い時間の始まりの予感がした。