「やっぱあんた、変だよ」



笑い声と共に、背後から伸びてきた手があたしの腰の横を通り、そのままお腹の前で組まれた。


まるで、離さないとでもいうように。



……え? なに?



一瞬、何が起こってるのか理解できなくて思考回路が途絶えてしまう。


戸惑ってしまったあたしは、気づかないうちに漕ぐ力を緩めてしまっていた。


というより、体が硬直していた。



「グズグズしてないで、早く連れてって」



「……っ!」



クスッと笑う有馬くんは、まるでイタズラを仕掛ける子供みたいだ。



くう!この天然デストロイヤーめっ!!




約1時間、あたしは終始このドキドキと戦いながら自転車を漕ぎ続けたけれど、不思議と疲れることはなかった。


むしろ、その時間はとても短くて、とても楽しくて……もっと続けば良いのに、なんて、思ってはいけないことを、願ってしまった。