「つか、あんな絵どうでもいいじゃん?旧図書室に置いてるってことは、もう用済みってことなんじゃねぇの?」



ダメだ……。イライラする。



有馬くんは放課後に美術室へ行くと、美術部の子が絵を描いてるし、棗先輩もいるから、わざわざ人目のつかない旧図書室を選んでいるんだ。


そこにあえて来るなんて、有馬くんに会いにきてると言ってるようなもんだ。



このあたしみたいにっ!!



「違います……。
何も知らないクセに……知った風に言わないで」



抑えきれなくなった怒りが体中を駆け巡って、あたしは思わず右手で左腕をギュッと掴んで、爪を立ててしまった。



「有馬くんが、周りを気遣って旧図書室で描いてるってことも、あの絵にどれだけの想いが込められてるかも、完成させるのにどれだけのエネルギーが必要かってことも……何も知らないクセに!」



そこは、昨日有馬くんに手当てをしてもらった部分で、ガーゼの上からでも押さえると傷が痛む。



思わずギュッと下唇を噛み締めた時、あたしの力の入った手にそっと誰かの手が重なった。