引き止めたかった。



引き止めて、文句の1つでも言ってやりたかった。



だけど、そんな男子生徒のことなんか見向きもせず、有馬くんは、らしくもなく大きく目を見開いたまま、こちらに駆け寄ってきた。



有馬くんの瞳の中に、キャンバスの絵ではなく、あたしが映ってることが不思議だった。



「……血が出てる……っ」



「えっ?」



冷静さを欠いている有馬くんの視線の先を追うと、あたしの腕からはただ床で擦っただけとは思えないような出血が起きていた。



……な、なにこれ!?



「ちょ……!早く手当てを……」



「大変!絵が汚れる!」



「…………は?」



有馬くんの、素っ頓狂な声が耳に届いた。