「私、すごく嬉しかったの。慧が私以外の誰かと親しくしている姿を見て。慧はいつも私の絵ばっかり見てて、それ以外は何も見えてないように思えたから」


「…………」



もしかして先輩……有馬くんの気持ちに気づいているのかな?


でも、あえて気づかないフリをしているよう見える。



「慧とあたしは、もともと幼なじみなの」


「え、そうなんですか?」



それは、初耳だった。



「うん。小さい頃から一緒にいて、私が絵を好きなのを理由に、慧もマネて絵を描くようになった」



初めて聞いた真実に、驚きを隠せない。


有馬くんが棗先輩にだけ気を許してるのは、そういった理由があるからなんだ。


いいな……小さい頃から有馬くんのそばにいたなんて……。


ちょっとだけ、棗先輩が羨ましかった。


ううん。ちょっとだけじゃないね。


有馬くんに想われてる棗先輩が、すごく羨ましい。