「失礼しまーす……」



そっとドアを開け、小声で中を覗く。


今回は足じゃなくて、ちゃんと手で開けた。



すると、中にいた生徒がこちらを振り返った。



「あれ、あなたは……」



「!」



ビックリした。


中にいたのは、有馬くんではなく、棗先輩ただひとりだった。



「美術室に何か用?」



優しい声でそう問いかけて、快く迎え入れてくれた棗先輩だが、あたしは咄嗟に両手を前に出して横に振った。



「い、いえ……!ちょっと人探してて……!でもいないので、大丈夫です……!」



「人……?誰を探してたの?」



「あっ……えっと……」



棗先輩なら、有馬くんの居場所を知ってるかな?


でも、この人に聞いてもいいのかな……?