棗先輩に対する想いを、そのまま失くそうとしないでほしい。


ちゃんと真剣に、向き合ってほしい。


あたしの行動は、ちゃんと有馬くんの支えになってるかな?



「俺、あの絵を完成させるよ」



そっとあたしから離れ、真剣な瞳を向けてそう言った有馬くんは、見惚れるほどにかっよくて、凛としてて……ますますドキドキした。



「途中で投げ出したりしない。もう、逃げない」



「うん……」



自然とあたしは、口数が少なくなってしまう。



「だから、あのさ……」



口ごもる有馬くんに、あたしはなんとなくだけど次に言いたいことを察することができた。



今、美術部は展覧会の絵のために放課後頑張っている。



有馬くんが絵を描ける時間はない。


だから……。



「昼休みは、もう球技大会の練習できないね」



ちゃんとわかってるから、大丈夫。


そう自分に言い聞かせながら、有馬くんに笑って言ってみせた。



「うん、ごめん。ありがとう」



どうか、有馬くんがもう一度、諦めずに棗先輩と向き合ってくれますように。


泣きたい気持ちを抑えて、必死で笑ってみせた。