美海が手の怪我の一部始終を話した日の事だ。


「あの男、今度こそ殺してやる」

「か、果南!信ちゃんもわざと灰を落としたわけじゃないんだし」

「でも美海に手を挙げようとした事実は変わりない」

「でも信ちゃんそのあとに手を挙げるつもりはなかったって言ってたし」

「そんなの後からの言い訳だよ。いつも信ちゃんは美海に対して言い訳してきたじゃん」


マナと浅見が美海に反論している横で果南が携帯を取り出した。


「おめえ今すぐ浅見ん家こいよ!」

「果南?どうした?ミス応陵がそんな汚い言葉使っちゃだめじゃん」

「美海もいっから。早く来いよ」


果南は携帯をベッドの上に投げつけた。


浅見は止まらない煙草をまた吸い始め、
マナはローラー付きの椅子に座り
貧乏ゆすりをした。


美海は部屋の端で
罰悪そうに体育座りをしていた。



そんな悪い雰囲気の事も知らずに20分後に
陽気に玄関を開けた信吾に
ガラスのコップを投げつけたのは果南だった。


運よくコップは
壁に当たり、
信吾は息を飲んだ。