「俺実家だからさ、こんな所で悪いけど」
2人で入ったのは一番近くのラブホテル。
今は2人きりになれる空間なら
どんな所だって構わなかった。
「急にごめんね」
「泣きすぎて喉乾いたでしょ?なんか飲む?」
ホテルの冷蔵庫を開けながら千歳が振り向いた。
千歳の顔を見ると
また抱きしめてほしくなる。
そんな衝動を抑えながら水、
と答えた。
「煙草吸っていいよ。その方が落ち着くでしょ?」
「なんで煙草吸ってること知ってんの?隠してたはずなのに!」
「匂いで。俺煙草嫌いだから敏感なんだ」
「じゃあ尚更千歳の前でなんか吸わないよ!」
「ううん。美海なら許せる。美海ならなんだって許せるよ」
千歳の大きさに
美海はまた目が潤んだ。
確か信吾も同じような事を言っていた。
千歳の愛情は
信吾と同じ域に達しているんだ、
という事を知れて
少し昔の信吾の発言に感謝した。


