果南の車が走り去るのを見てから
美海は千歳の車に駆け寄った。
「美海!おいで、」
千歳の言葉が終わる前に
美海は千歳に飛びついた。
溜まっていた涙が一気に溢れ出し、
千歳のシャツを汚していく。
何も言わず、
何も聞かず、
千歳はただ美海をきつく抱きしめた。
美海の手に包帯が巻かれている事も
飛びつかれた時に気が付いた。
美海が最初から寂しそうな顔をしていた事も
車の窓を叩かれた時に気が付いた。
それでも千歳は美海に対して何も言わなかった。
美海が自分から話してくれると千歳は信じていたからだ。
何も聞かない千歳に
美海は安心して泣き崩れた。


