歪んだ愛情【更新中】



暗い夜道を歩いて
美海はまた電話をし始めた。


「南駅まで迎えに来て。お願い」


その一言だけ告げると


すぐに電話を切り、
自分の手を眺めた。



うっすらと自分の目に浮かぶ
信吾の顔。



思い出すだけで怖くて、
初めて信吾に殴られると思った美海は
信吾の家を出て
改めて涙を流した。



信吾の家から駅まではいつもなら歩いて10分くらい。



でも時計を見ると、
もう信吾の家を出てから
20分以上経っている。


まだ涙は止まらない。



時計のガラスに落ちた自分の涙をふき取り
時計をはずした。



思い切り握りしめ
道路に時計を投げつける。



ガラスの割れる音と
別に何かが壊れる音がした気がする。


美海の中で何かが壊れる音。



無惨な姿になった時計を見て
美海は涙を止めた。



信吾に貰った
ブランド物の時計。


20万はしただろう。


そのまま時計を
放置して美海は歩き出した。