信吾の手を叩いた手をもう片方の手で握りしめた。
「ご、ごめん」
勝手な意識で動いた手。
信吾が触れた場所は
今日何度も千歳が触れた場所。
千歳の暖かい手が
何度も
何度も触れた場所。
千歳の感触が消えてしまう。
信吾を目の前にしてまで、
美海はそう思ってしまったのだ。
「ねえ、信ちゃん」
「何?」
「信ちゃんがあたしといる意味って何?」
唐突な質問に
信吾は目を丸くしたが
間を空けることなく答えた。
「美海といる意味じゃない。俺にとって美海の存在自体に価値があるんだ。美海がいる事で自分がこの先やっていける。美海なしでは生きていけないよ」
よくもそんなくさいセリフが述べられるものだ。
「でも信ちゃんはあたしに何回か裏切り行為をしてるよね?あれは何?」
「あれは、美海がどれだけ自分に必要か確かめたかった」
「言い訳じゃん」
「もうしない」
信吾の目は真剣だった。
3年も一緒にいる直感で
たぶんもうこいつはしないだろう、
と美海も感じていた。
「じゃあ美海は?俺といる意味」
美海は黙って下を向いた。


