「寒くない?」
「ちょっと寒いかな?冷房消していい?」
そう言いながら美海はボタンを押して
冷房を止めた。
片手でハンドルを持ちながら
信吾は反対の腕を後部座席に回した。
「はい。一応これかけてな」
膝の上に置かれたのは
美海専用の膝掛け。
美海の大好きなキャラクターの膝掛けだ。
この膝掛けから
よく違う女の匂いがしたものだ。
「お前はそんなに体が強いわけじゃないんだから、俺が怒る理由も分かるでしょ?」
「う、うん」
「美海のためを思って言ってるんだからね」
もう自分のためだとは思えない。
美海はそう心の中で思っていた。
信吾が、
美海を自分の見える範囲に置いておきたい、
としか思えない。
「美海。今日は家に泊まりな」
「は?あたし自分の家に帰るんじゃないの?」
「俺と一緒にいた方が何かあった時に安心だろう?」
「で、でも薬とか家だし」
「俺が非常用に1日分いつも持っているだろ」
美海が心配の意味がもう違う。
信吾は美海が自分以外の男の所にいかないかが心配なんだ。


