ライトの光ももう見えない。
車のエンジン音ももう聞こえない。
「あいつ、なんでまだ戻ってこないの?」
「まだ下にいる?」
浅見が下を覗くと、
美海は道路にしゃがみこんだままだった。
果南が玄関を飛び出し、階段を下りていく。
追うように浅見とマナが出ていく。
「美海!」
しゃがみこんだ美海の腕を思い切り引き、果南が大きい声を出す。
「泣いてるかと思った。びっくりさせないでよ」
「まだ聞こえるの。千歳の車の音」
美海の耳の良さは尋常ではない。
人より、数倍良く聞こえる。
地獄耳より遥かに上回っている。
少しでも長く、
聞こえ続ける限り
千歳を感じ取っていたい、
美海の想いに気付き
3人は黙ったままだった。
「美海?」
「もう聞こえないや。この聞こえなくなった瞬間、千歳は綾ちゃんのところに帰ったんだなって感じがする」
笑いきれていない笑顔。
頬があがりきっていない。
そんな美海の笑顔を見て、果南は頭に手を伸ばし、優しく撫でた。


