「ち、千歳?急にどうしたの?」
「あ、ごめん。なんか、いやまじでごめん!」
長い沈黙が車内に流れる。
片手でハンドルを握り、肘置きに左手が乗る。
その左手が美海の右手に重なり、思わず千歳の手を強く握った。
握り返された事に千歳は驚き、赤信号で急ブレーキを掛ける。
「俺、綾と別れる」
「え!どうしたの、急に」
「美海に気持ちが傾き始めてる。このまま綾と付き合っていてもよくないし、長続きなんてしない」
率直な千歳の言葉に
心が大きく動く。
待っていたのか、
それとも聞かない方が良かった言葉なのか
それは美海にも分からない。
でも
千歳の本心に美海は頬を緩めた。
「ち、千歳。あたしも信ちゃんと別れたら、そのときは、」
「言わないで。お互いちゃんと話がついたら言おう」
まっすぐ向けられる言葉に目を合わせ、信号が青になった事も気が付かずに
今度はお互い心を通わせ、唇を合わす。
クラクションで
顔を離し、
一緒に目尻を下げる。


