千歳の携帯の着信音が車内に鳴り響く。
ディスプレイのイルミネーションはピンク色。
ちょうど信号待ちで千歳が携帯を開くとすぐに深い溜め息が漏れる。
「見て」
開いたままの携帯が差し出され、美海は触れてはいけない物を触るように携帯を手に取った。
-大丈夫!時間なんて綾が合わせるよ。ちーはもっと自分の時間を優先していいからね。気にしないで!-
「今日、彼女も暇で遊ぶかっていう話を持ち掛けられたんだけど断ったんだ。その謝りのメールを入れたらこれだよ?」
「あー。なんか気を遣われすぎて疲れる感じだ。やっぱり綾っていうだね。彼女」
「やっぱりって?」
「メアドでなんとなく気がついた」
「嘘?分かりにくくしてあるはずなのに」
薄笑いを浮かべ、美海は携帯を返した。
あのメールは
まるで昔の自分だ。
信吾に嫌われないよう、
必死だった頃の自分にそっくりだ。
そんな自分に嫌気がさして、今の様に素で振る舞うようになったのは信吾の2回目の浮気の後からだ。


