咄嗟に口走った言葉に、自分で驚き、美海は息を飲んだ。
睨みをきかせる信吾から目を反らし、ゆっくり呼吸を始めた。
「幸せじゃなかった気がするの。いつも不安で、信ちゃんの浮気を心から許せない自分に嫌気がさしていた」
一度だけ、
一度だけ美海が本気で怒ったことがある。
信吾に対して、
浮気相手に対して、
怒り狂ったことがあった。
信吾はその日のことを頭に思い浮かべた。
最初の2回、美海は「もうしないで」と苦笑いをしていた。
3回目の浮気で怒り狂った美海を見て「もうしない」と心に決めたんだ。
あの美海が本来の姿だと思ったから。
いつも抑えていてくれた、それが伝わってきた。
「幸せじゃなかったよね。ごめん」
信吾の口から出る素直な返事に美海は目を丸くした。


