もし、今も千歳との関係が続いていたら、今美海の手には違和感のある指輪が輝いていたかもしれない。
信吾が買ってくれる指輪とは違い、ブランド物の派手な指輪ではなく、シンプルでお互いの絆を確かめる指輪。
きっとそんな指輪に違いなかっただろうと思いながら、美海は少し笑みを浮かべた。
「何考えてるの?」
幸せだった明るい過去の世界から一気に信吾の冷めた声によって、現実の暗い車内へ押し戻された。
「指輪!ちゃんとつけるから!」
「何考えてるの?って聞いてんの」
「信ちゃんと初めて指輪を買いに行ったときのこと!悩みに悩んで名前まで入れたのに、手入れしなくてすぐ2人で汚したな、っていう思い出!」
よくも、まあ口が回ることだ。
すぐに言い訳の浮かぶ美海は頭の回転がいかに早いかをわからせる。
間を開けることもなく、すぐに言葉が出てくるのだからすごい。


