風で流れる雲を目で追いながら、かくれんぼし始めた星たちを眺め、窓から顔を出す。
すべての意識を耳を集中させ、目を閉じる。
微かに聞こえる風の音。
家から少し離れた大通りから聞こえる数台の車の音。
どこかの家で猫が喧嘩している声。
色んな音が耳に飛び込んでくる。
拾いたい音だけに集中し、頑なに目を閉じる。
何時間も外に顔を出していたが、欲しい音は聞こえてこなかった。
美海は信吾の車の音を探していた。
今までの信吾なら喧嘩した後、すぐに車で家に訪れる。
沈黙が気まずくなり、電話を強制的に切るのは昔からの行動。
絶対に途中で電話を切る。
でも必ずその後家に突然来るのが信吾だ。
いつも窓から顔を出し、耳を澄ませて信吾を待った。
高校の時は必ず1時間後には自転車の音が聞こえてくる。
車を買ってからは20分後には、信吾の車のエンジン音が聞こえて来た。
でも今日はまったく聞こえない。
初めてだった。
勝手に電話を切った後に信吾が家に来ない。
初めての経験で美海も若干戸惑った。
こんな時にどうすればいいのかがすぐには見つからない。
今まで美海が悪くて電話を切られた事がなかった。
喧嘩の原因はいつも信吾で、怒られた挙げ句、勝手に電話を切り謝りに家に来る。
「今日はあたしがいけないのかな…でも何が悪かったのかな」
窓を閉め、エアコンにリモコンを向け電源を入れた。
冷たい風気が部屋中に行き渡る。
冷房の風を浴びながら、もう一度スケジュール帳に目を通す。


