俺、と言いかけて信吾は口を閉じた。
亮介が問いかけたが信吾は黙ったまま一点をじっと見つめ、そのまま空き缶を思い切り握りつぶした。
美海に手を挙げたことを亮介に言おうとした。
軽蔑されるだろうし、浅見たちに言われまた責め立てられるだろう。
でも自分の犯した失態は認めなければ、と思った。
どうしても口に出すことが出来ない。
意識の中で「手を挙げられて当たり前だ」と思ってしまう。
「お前、女に手、挙げたことある?」
「いや、ないけど…まさか!?」
亮介はテーブルに缶を叩き付け、身を乗り出した。
「あ、ないよ!手、挙げてないよ!」
「だ、だよな。まさかお前が美海ちゃんに手を挙げるわけないよな」
目線を逸らし、信吾は床を見つめ続けた。
本当の事は言えない。
美海もきっと言わないはず。
このまま亮介に本当の事を言ったとしても、何かが変わるわけじゃない。
本当は手なんて挙げたくない。
できればまた美海を笑い合いたい。
美海を傷つけたくない。
でも意識と裏腹に、
自分の行動は美海を傷つける一方だ。


