煙草を加えると、すぐに亮介の手が伸びてきた。
石のこすれる音と一緒に火が点く。
ありがとう、と言いながら火に煙草を近づけた。
「でもさ、美海ちゃんは今ちゃんと信吾に気持ちが向いてるんじゃないの?」
思い切り首を横に振り、
溜め息と同時に煙りを吐き出した。
「まったくだよ。絶対まだ千歳が好きだと思う。でも努力しようとしてる、それが逆に俺には息苦しいんだ」
「美海ちゃんは気持ちが追いつかないって言ったんだよね。昔は逆だったんでしょ?」
少し首を傾げながら信吾は頷いた。
「たぶん…前は美海の方が好きっていうのが出てた気がする」
信吾は自分の左手を大きく広げ、
手にまっすぐ視線を向けた。
そのままきつく拳を握りしめ、
拳を自分の口元に当てる。
気が付いているかな?
頭の中で言葉を並べ、
まだ飲み続けているだろうという美海に問いかける。
付き合ってから一度も外していないペアリング。
5回も変えたが、新しく買ったペアリングはその場でつけ、
一度も薬指から外した事はなかった。
そのペアリングを信吾は軽井沢から帰る日に初めて外した。
美海は外した事に気が付いているのか、
信吾はずっと気になっていた。


