ハンドルに思い切り頭を打ち付ける。
あの日と同じ行き場のない怒りをぶつける。
助手席に投げた赤い箱を掴み、
美海、と何度も呟く。
エンジンを掛け、
車を走らせたが家に帰る気分ではなかった。
もう時間も遅い。
でも夏休みで、
明日の予定が早いわけではない。
走ってくる対向車のライトで
時々目を細めた。
コンビニに立ち寄り
車をバックさせながらミラーに目を移す。
目に入る水を一気飲みをする姿。
エンジンを掛けたまま
車を飛び出した。
「信吾!!」
その声に水を飲む手を止めた。
何も言わずただ千歳を睨み付ける信吾は、
人差し指の骨を鳴らした。
信吾の肩を掴む亮介の手に自分の手をゆっくり置き、
思い切り掴んだ。
「大丈夫、何もしないから」
その言葉に一番驚いていたのは千歳だった。
殴られる覚悟で信吾の名前を呼んだ。
何度殴られたって構わない。
それでも頭を下げて
美海が欲しい、と言うつもりだった。
「どうしたの?」
綾と同じ目で信吾は千歳を見下ろした。
頭に浮かぶ綾の顔を振りきり、
信吾ににじり寄る。


