消毒液の匂いと、
清潔感の溢れる病室で綾はゆっくりと目を覚ました。
「ちぃ…」
一番最初に目に入った姿を見て思わず笑みをこぼした。
愛しい娘の名前を叫びながら、
綾に抱きつく母親。
その腕の中でも目線はしっかり千歳に向いていた。
「どうしてこんな事したの?」
泣きじゃくりながら声を上げる母親の後ろで、
千歳は綾を睨み付けた。
「ちぃと2人きりになりたい」
母親の愛情も虚しく、
病室を出るように点滴の刺さった腕で扉を指された。
2人きりになった病室は長い沈黙が続いた。
綾は笑顔をこぼしながら千歳を見つめ続けた。
「別に死にたくてやったんじゃないんだろう?」
「そんな事ない!ちぃがいないと本当に死んじゃう!」
綾の高い声が耳障りで、
眉間にきつくしわが寄る。
「今俺がここにいる事を喜んでる、それが死ぬ気がなかった証拠だよ」
頑なに首を振る綾に苛立ちを見せ、
拳を握った。


