盛り上がる4人をよそに
亮介はこっそり信吾に耳打ちをする。
「帰らない?」
「何で?」
亮介を睨み付けたが、その目に驚くこともせず話を続けた。
「この場に男が来たりすることは絶対ないよ。でも今の美海ちゃんに落ち着きを取り戻すことは大切なんじゃない?」
美海を見つると
果南に体を預け、すでに酔う姿が目に入った。
「信吾にとっても美海ちゃんが元のように笑ってくれた方がいいでしょ」
4人で話す姿は相変わらずで、
笑顔が絶えず、いつまでも高校生のままだった。
「でも、」
「何か3人に知られたくない事でもあるの?」
さっきよりも目を細め、
信吾は亮介に目線を移す。
少し息を吐きながら亮介は頬を緩ませた。
「そんな顔するとまるで何かありました、って言ってるようなもんだ」
掴みかかろうとする信吾の手を止め、
亮介は顔を近づけた。
「あまり俺を怒らせないでくれよ」
冷静で低い落ち着いた声、
信吾でさえも初めて聞く声で握っていた拳を緩めた。
「俺たち帰るわ、男2人で語りたい事もあるし」
亮介が急に立ち上がり、
4人の視線が一斉に集中した。
浅見が寂しいそうに視線を送ったが、
信吾も煙草をポケットにしまいながら立ち上がったのを見て顔を伏せた。
手を振りながら居酒屋を後にした亮介に反し、
信吾は黙ってその場を立ち去った。


