名前を叫びながら、マナは美海に飛びついた。
抱き合う2人を優しく果南が見つめていた。
いつもの居酒屋。
いつもの空気。
いつもの4人。
ただそこの違和感を感じさせたのは信吾だった。
いつもは陽気で、
冷たくされても果南に無駄に絡む。
でもそんな信吾が
笑いもせず、先にお酒を飲んでいる。
「乾杯してないのに飲むなよ」
冷たく言い放つ果南にいつもなら、
相変わらず俺に厳しい!などと嘆くのに
グラスを置き素直に謝った。
全員が席に着き、
亮介の声で乾杯が始まった。
騒ぐ事が好きな信吾は、
必ず乾杯の音頭をとりたがる。
でも信吾は黙ってみんなとグラスを打ち付けるだけだった。
そんな信吾には誰も触れず、
あえて美海と信吾の話しはしなかった。
果南の旅行の話し、
相変わらず泊まらないマナの家族の話。
誰も触れない会話を
一番最初にしたのは意外にも信吾だった。


