箱を手に握りしめながら
千歳はベッドに腰を下ろした。


深い溜め息を付き、
携帯を取り出す。


「現在使われておりません」


1日何回このアナウンスを聞けばいいのだろう。


それでも勝手に手が動いてしまう。


データフォルダにある大事な笑顔。

どうしても手に入れたい笑顔。


「美海…」


携帯を額に押しつけ、
自分の記憶を辿った。


甘い声、
雑な口調、
丸い大きな瞳、
柔らかい頬、
小さな手。

なで肩の小さな体、
少し痛んだ長い髪の毛。


思い出すだけで涙が出そうになる。


狂気して泣き叫ぶ美海の姿、
最後に囁かれた言葉、
そのまま信吾の手を引いて離れていく姿。


携帯を握る手に力が入ってしまう。


目を閉じ、
何度も記憶を辿る。