「この箱何?」


肩に掛かる髪を揺らしながら、赤い箱を見つめる。

問いかけに答えてくれない男に、
箱を投げつけた。


「あの子に?」


それでも何も答えてくれない。


「ねえ!」


やっと治り掛けた傷ついた顔に両手を置き、
自分の目の前に向けた。


やっと目が合ったが、頬に置いた手を振り払われる。


冷たい態度に、こらえきれなかった涙が頬を伝う。


「別れようよ」


やっと口を開いた男は遠くを見つめながら口を動かす。


必死に首を振るが、その姿すら目に映してくれない。


鞄を持ち出し、ドアノブにかざした手に大きな手が重なった。


「頼むよ、綾」

「やだ!絶対やだ!」

「なんでだよ」

「今まで何もわがまま言わないですごして来た!このわがままくらい許してよ」


頭を抱えて溜め息を付く。


「それはわがままじゃないよ」

「ちぃのバカ!!」


手を振り払われ、部屋を出ていってしまった。


静かになった部屋を見回し、
赤い箱を手に取る。