世間はお盆が始まり帰省ラッシュを迎えていた。


東京に向かう道路に車は少なく、
反対側は渋滞が続いていた。


空いた道路を軽快に飛ばし、
2台の車は時々遊ぶように並んで走った。


スピードで信吾の車に勝てる事はなく、
亮介の車を置いて走る。


車の中で流れる音楽は信吾の好きな曲ばかり。


いつもは美海の好きな曲が流れる車内に違和感を感じる。


口数の少ない信吾の考えが読めず、
美海は無理矢理会話をした。


相づちしか打たない信吾に苛立ちを見せるが、
信吾を怒らせないために何度も息を飲み込む。


ハンドルを握る手を見つめ、
美海は首を傾げた。


何かがおかしい。


でも何がおかしいのか気が付くことは出来なかった。


パーキングエリアで飲み物を飲む信吾の手をもう一度見つめたが、
やっぱり何かがおかしい。


自分の手を見つめ、
違いを探したがやっぱり見つからない。


浅見の手を見つめ、
亮介の手を見つめるが違いはない。


ひたすら首を傾げ、
悩み尽くす。