煙草を買い終え、ポケットの中に財布をしまい込む。

反対のポケットに手を回し、
信吾は携帯を取り出した。


信吾と同じ携帯だったが、
色はピンク色だった。


手渡された携帯を見て、美海は笑顔を向ける。


「ありがとう」


すぐに電話帳を開くと
既に4件、登録がされていた。


浅見、果南、信吾、マナの順番で並ぶ文字。


番号とアドレスが間違いなく登録されていた。


メニューボタンを押し、
そのまま0のボタンを押した。


新しい番号が表示され、
その下に表示されたアドレスを確認した。


shingo..0921..miu@xxx.ne.jp


信吾の名前に記念日。
そして最後に自分の名前。


信吾の考えそうなアドレスだった。


アドレスがもう考えられている事も、
電話帳に番号が登録されている事も先読みしていた。


「信ちゃんのアドレスと名前が逆だね。覚えやすい」


思ってもいない事を言葉にする。

ひきつる頬を隠すように、信吾から顔を逸らした。


「登録、増えてないかちゃんとチェックするから」


少し冷や汗を掻きながらその言葉を流した。


上手くやろう、
出来る、
今まで愛して来た人だもん。

頭に刻み込むように、言葉を繰り返す。


先に車に乗る信吾を追い、
助手席のドアを開けた。


別荘のある山に太陽が顔を隠そうとしている。


太陽に照らされ、
てっぺんが見えなくなる山をめがけて車が走りだす。