まず美海に電話を代わる前に
10分、信吾は説教をくらうだろう。
勝手に美海を連れ出したこと、
あの日の行動、
しかし2人の予想に反し
随分と落ち着いた声で電話に出た。
長々と謝りの言葉を並べる信吾に、
うん、うん、とただひたすら頷く果南の声が通話口から漏れている。
わかったから、美海の声が聞きたい。
さっきよりすこし荒れた口調で告げると、
信吾はすぐに電話を手渡した。
「ご飯食ってんの?寝てんの?」
黙る美海に対し、果南は深い溜め息を付いた。
「だと思った。ちゃんと食って寝ろ!そんで早く帰って来い。会えないと辛いもんだね」
鼻をすする音がして、
何かを言おうとしたが美海は口を動かすだけで
声として何も出していなかった。
「もう美海は何も考えなくていいよ」
それだけ言うと、果南から電話を切った。
機械音が鳴る携帯に耳をあて、
そのままひたすら美海は泣いた。
会いたい、
3人に会えば自分が落ち着ける。
声を聞いただけで
こんなにも安心する。
でも結局美海は何も言えなかった。
信吾は携帯をポケットにしまい、
怒られなかったー。
と陽気に話しだす。
その横で美海は涙を拭い
良かったね、と無理矢理微笑んだ。


