「話したくなった時に話していーよ」



空き教室。


さっきまでいた、朝は人があまり来ない場所じゃなくて、普段から人があまり来ない場所。

ましてや授業が始まってからなんて、よほどのことがない限り人は来ない。



キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン


本鈴が、鳴った。



「えっと、私の中学の頃の話なんだけど」



冬馬くんに話したみたいに、全部話した。


唯一違うのは、友達の話とかじゃなくて、私の話として話したこと。


取り繕わない。アキには。それを自分だけでもわかっていたかった。




私の話を聞いたあとアキは一呼吸置いて


「なんだ、ハルはなんにも悪くないじゃん。」


軽々とそう言いのけた。


「でも、やっぱり私がしっかり誤解を解かなかったのも悪いし、誤解されるような態度を取ったのかもしれないし、」


いざ完全に肯定されると慌てて違うと言いたくなる。


「あぁ、言葉が足りなかったね。


どっちも悪くないんだよ、そういうのは。

誤解にさ、どっちが悪いかなんてないの。

誰だって不安定になるよ、恋愛ごとにおいては特に」


軽っ


つい言ってしまいそうになる。


そんくらい、軽かった。



なんか、助けられてばっかりだ。昨日から。


冬馬くんにアキに。


誰も、悪くないんだ。


私も、友達も。


誰のせいだって、考えなくていいんだ。



「大体さ、まだ悩んでるなんて、時間もったいないよ?

今、私がいるならいいじゃない。違う?」



自信満々の言葉。


「違わない。」


「でしょ?」


心地いい。アキの隣が。


アキの持ってる雰囲気が、私の心を落ち着かせる。


「アキ、ありがと」


「どういたしまして」



キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン



チャイムの音が聞こえて、気づくと1時間目が終わっていた。