「ありがとう」
私はそう言って、立ち上がる。
「なんか、希望が見えた。
本当にありがとう。」
「あっ、友達にね!?
友達に希望が見えたんだよ!?
私じゃなくて、友達に!
伝えとくね!!」
あ、危ない。
完全に主観になってた。
バレてないよね、大丈夫だよね。
「うん。
伝えといて。」
何が面白かったのかわからないけど、冬馬くんが少し笑いながら言う。
笑顔、可愛い...
つい思ってしまって、自分の顔が熱くなるのがわかる。
好きな人の笑顔は、凶器だ。
「あ、そうだ。」
何かを思い出したように冬馬くんが口を開く。
「桜坂のこと、紅葉が心配してたよ。
なんか変だから、聞いてこいって言われた。
ホントはこれ内緒なんだけど。」
アキ...?
心配、してくれてたの?
「だから、ありがとうは、紅葉に言ってあげて。
あいつも喜ぶだろうから。」
バレてたかぁ、誤魔化せてなかったかぁ
侮れないなぁ
「うん、わかった。
でも、雪那くんもありがとう」
最後にお礼を言って、私たちはそのまま帰った。
方向が違うから、途中までだったけど、
一緒に帰れたのが、すごく嬉しかった。
これで、冬馬くんとの距離が、すこしだけ縮まった気がする。

