西園寺さんは俺から目を反らし、俯いた





「一人で何かやってみたかったんです。何でもよかったの。だから家に帰るくらい簡単だと思って軽い気持ちでやってみました。でもこのざまです。


笑っちゃいますよね??一人で家にも帰れないんですよ??家の最寄駅すら知らなかったんです。」





そう言って寂しそうに笑い、俺を見る





「正直引きますよね??呆れますよね??」






俺は腕を組み、ため息をつく




「別に引いてないけど??できなくて当たり前だよ。やってこなかったんだし、やる必要がなかったんだから。


俺ら庶民に高級レストランに行ってテーブルマナーを完璧にやれって言われても今日明日じゃできないだろ??それと一緒。西園寺さんはそういうの得意でしょ??



そういうことだよ。お互いこの先必要なことを繰り返し練習して今は当たり前に使えてるんだよ。だからできなくても当たり前だし、知ってて役に立つことはあるかもしれないけど、この先まったく必要ないことかもしれない。



その価値は自分で決めればいいよ」





西園寺さんは穏やかな顔をして空を見上げた





「碧維くんは優しいですね。何故だか碧維くんといると今まで知らなかったものとか。初めての気持ちも。新しい考え方も。どんどん増えていきます。ありがとう」






そう笑顔で俺の方を見る





俺は思わず目を反らす
このもやもやと心臓のあたりがつつかれる感じ
何だろう






「電車で、帰ってみようか。一緒に」





俺は立ち上がり、西園寺さんに手を差し伸べた