彼はバスケ漫画の名前を答えると
「これけっこーリアルで面白いんだよね。漫画なのに、主人公、試合に負けてばっかだったりするしさ。共感できんだよねー……って、語りすぎだね」
と、照れくさそう。
こういうのって、親近感っていうのかな。
漫画に夢中になるなんて、わたしでもよくある。
普通の男の子なんだって思うと少し安心する。
バスケも本当に好きなんだろうな。
「今、時間ある?」
「えっ……」と、首を捻った。
「じゃあ3分。3分だけ」
というから、ベンチに間隔を空けて座った。
市ノ瀬くんは炭酸のジュースを手にとる。
「続きどうぞ」
「いや。誘ったの俺なのに漫画読んだら意味わかんないから」
「……」
それはそうか。気を遣ったつもりが、わたし、ずれてたかも。
市ノ瀬くんのペットボトルの蓋をあけると、シュワシュワと炭酸が溢れてきた。