一度目線を上げた市ノ瀬くんと視線がぶつかった……気がしたのに、声をかけられなかった。


うわ……恥ずかしい。


変な歩き方してまで、意識してしまったのに。


そういえばモテるんだもんな。あんなこと本気で言う程、女友達に困っていないだろう。


だけど冗談だったら冗談って、あのとき言ってくれたらいいのに。


わたしなんでも信じてしまう。単純な女なものですから。


……やっぱり男の子って嫌い。


心が黒い雲に覆われれて行くのがわかって、顔をあげた。


あんなことだけで、男の子をひとつに言いくるめちゃいけないと、気を取り直した。